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神戸家庭裁判所姫路支部 昭和49年(家)71号 審判 1974年7月06日

申立人 小峰正勝(仮名)

相手方 小峰あさ(仮名)

主文

相手方が申立人の推定相続人であることを廃除する。

理由

1  申立人は主文同旨の審判を求めた。

2  本件および関連事件である昭和四八年(家)第三九一号推定相続人廃除申立事件(本件申立人が本件相手方に対し昭和四八年五月一九日申立て、同年一一月二九日取下げた)の調査および審判の結果によれば次の事実が認められる。

(1)  相手方は申立人の三女であつて遺留分を有する推定相続人であり、申立人所有の資産としては家(約五〇坪)家敷(約二〇〇坪)のほか農地約三反がある。

(2)  相手方あさの夫である小峰一実(昭和五年四月一日生)は昭和三三年三月六日申立人との間に養子縁組をなし、同時に相手方と婚姻の届出をなし、両者間に一裕(昭和三四年七月二〇日生)と友治(同三六年四月一日生)の二児があり、申立人と同居して今日に至つている。

(3)  小峰一実は○○機関士として稼働し、現在月収約一三万円である。しかし申立人は八〇歳の高齢で、しかも長く心臓弁膜症を患い本年初めごろからは全身浮腫を生じ、歩行時呼吸困難で歩行ほとんど不能の状態にある。

(4)  しかるに相手方は、家庭に別段の問題もなかつたにも拘らず、夫や二児をはじめ病身老齢の申立人を捨てて昭和四五年六月二三日ごろ突然家出し、爾来四年間行方不明で全く音信不通である。しかしてこの間老父および二児の食事看病等はほとんど養子である小峰一実の肩にかかり、○○の勤務にも支障を生じ、申立人も養子に対し実子の不行跡を申訳ないという気持に駆られている。

(5)  相手方は昭和四二年七月ごろから四五年六月まで高砂市のカー用品百貨販売の○○という店に勤めていたが失踪後兵庫県揖保郡○○町の△△というモーテルに阿部徳子という偽名で住込稼働していた事実が判つたほかには、行方は全く不明であるが、勤務先その他の言を総合すると、家出前は服装も派手でヤクザ風の男の出入が多かつたことからおそらく、その一人と一緒に大阪または四国方面に行つたものと思われる。

(6)  相手方は派手で浪費癖があり次のような借財等がある。

昭和三六年ごろ高利貸に金を借り、その返済のため無断で申立人名義の田三〇〇坪を抵当に入れて○○農協から三五万円を借出し、また同じころ一実の貯金一〇万円を無断で払出し浪費した。また無断で時計、指輪などを購入した。また四五年ごろ夫のモーニング、背広などを無断で売却小使いにあてた。

また失踪後判明したところでは、四七年六月ごろ、夫名義の簡易保険満期金一三万円を浪費したほか、生命保険を途中解約したり、保険会社から五万円を借出しているが使途不明である。また○○信用金庫からも一〇万円を借受け、農協に預金していた米の供出代金三〇万円を引出し消費していた。

なおカー百貨○○に勤務中、美容院、八百屋、電機店、呉服屋などに一万円ないし二万五、〇〇〇円を借金し未払であり、モーテル、○○に勤めている時、電機店で一〇万円の借りを作つていたほか、○○歯科医院の名をかたつて、物品の購入代金三〇万円余を借金として残していた。

3  以上の事実からすれば、相手方は、正当な理由なく申立人や夫、子供を捨てて顧みず、音信不通四年に及んでいるほか、申立人や夫の経済状態からすれば身分不相応の浪費をして身を持ち崩して行方をくらましたものと認められ、結局民法八九二条の「著しい非行」に該るものといわねばならない。

よつて本件申立は理由があるからこれを認容し、主文のとおり審判する。

(家事審判官 梶田寿雄)

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